ものぐさや
悪役が主役の『戦隊もの』小説
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た ただの婆さん(前編)
「どうしましょうかね……?」
カーくんは『ブラック・サンダー仮本部』こと雷太の部屋の隣にある自室で、愁いを帯びた表情でパソコンのディスプレイを見つめていた。会社を立ち上げるには、当然のことながら金が要る。資金は少し余裕をもっておかねばなるまい。思ったよりも費用がかかるという自分の試算を何度眺めても数字は小さくならない。
「雷太さんに宝くじを買ってもらうと手っ取り早いんですが、そうも行きませんしね」
雷太には宝くじを当てるという特技がある。『運がいい』というレベルは遥かに超えている。必ず当たるからこそ『特技』なのだ。新井式廻轉抽籤器(アライシキカイテンチュウセンキ)も雷太の前にはひとたまりもない。雷太は商店街の福引では必ず一位を引いてしまうので、欲しいものがあるとき以外はひかないように雷太は気をつけている。年末の福引を引くたびに、温泉旅行に行くわけにもいかない。
「ここで悩んでも仕方ないですね」
カーくんが大きく伸びをすると、パソコン用の椅子が軋んだ。背骨がぱきぱきと軽い音を立てている。どうやらだいぶ長いこと作業をしていたようだ。
「気分転換にでも行きますか」
※ ※ ※
「あのー」
住宅街を駅に向かって歩いていると、カーくんは後ろから声をかけられた。すぐさま振り向いたが、そこに人はいない。
「ごめんなさい、十円貸してくださらない?」
少し視線を下にずらすと上品なスーツを着こなした老婆がいた。身長は一五〇あるかないか、といったところ。雷太よりも少し低いくらいだ、とすぐさま雷太基準でカーくんは認識した。
「ええ……いいですけれど」
「『つめた〜いおしるこ』が買いたくて」
老婆は自動販売機を指差した。自動販売機は今時珍しいコインしか使用できないタイプのものだった。
「ああ、はい」
「ありがとうね」
老婆は嬉しそうに自動販売機にコインを投下して、希望のものを買ったようだった。冷たいお汁粉の缶ジュースなど、罰ゲームで飲む以外は思いつかないのだが。甘くて冷たい小豆が缶の底に残るあの気持ち悪さが何ともいえない。
「私が飲むんじゃないのよ。でも、あの人が好きだったからね」
訝しげなカーくんに老婆は微笑む。きっとこの近くにある墓地に故人のお墓があるのだろう。こんな時、どういう顔をしたらいいのか、カーくんは未だに分からない。
「そんな顔をするんじゃないの」
「すみません」
そう謝るカーくんの背中を老婆は軽く叩くと、手招きをして、カーくんを屈ませた。不思議そうに老婆の顔を覗き込むようにしたカーくんの額を人差し指ではじいた。
「痛っ」
それ程の衝撃はなかったが、思わず声が出た。カーくんが反射的に額に手を当てると老婆はほほほ、と笑った。カーくんはどの年齢層にも支持される美形である。黒田家の最寄の商店街ではファンクラブが密かに設立されていると専らの噂である。そんな男にいきなりでこぴんをかますとは……この老婆、ただの婆さんではない。
次回 「た ただの婆さん(後編)」
カーくんは『ブラック・サンダー仮本部』こと雷太の部屋の隣にある自室で、愁いを帯びた表情でパソコンのディスプレイを見つめていた。会社を立ち上げるには、当然のことながら金が要る。資金は少し余裕をもっておかねばなるまい。思ったよりも費用がかかるという自分の試算を何度眺めても数字は小さくならない。
「雷太さんに宝くじを買ってもらうと手っ取り早いんですが、そうも行きませんしね」
雷太には宝くじを当てるという特技がある。『運がいい』というレベルは遥かに超えている。必ず当たるからこそ『特技』なのだ。新井式廻轉抽籤器(アライシキカイテンチュウセンキ)も雷太の前にはひとたまりもない。雷太は商店街の福引では必ず一位を引いてしまうので、欲しいものがあるとき以外はひかないように雷太は気をつけている。年末の福引を引くたびに、温泉旅行に行くわけにもいかない。
「ここで悩んでも仕方ないですね」
カーくんが大きく伸びをすると、パソコン用の椅子が軋んだ。背骨がぱきぱきと軽い音を立てている。どうやらだいぶ長いこと作業をしていたようだ。
「気分転換にでも行きますか」
※ ※ ※
「あのー」
住宅街を駅に向かって歩いていると、カーくんは後ろから声をかけられた。すぐさま振り向いたが、そこに人はいない。
「ごめんなさい、十円貸してくださらない?」
少し視線を下にずらすと上品なスーツを着こなした老婆がいた。身長は一五〇あるかないか、といったところ。雷太よりも少し低いくらいだ、とすぐさま雷太基準でカーくんは認識した。
「ええ……いいですけれど」
「『つめた〜いおしるこ』が買いたくて」
老婆は自動販売機を指差した。自動販売機は今時珍しいコインしか使用できないタイプのものだった。
「ああ、はい」
「ありがとうね」
老婆は嬉しそうに自動販売機にコインを投下して、希望のものを買ったようだった。冷たいお汁粉の缶ジュースなど、罰ゲームで飲む以外は思いつかないのだが。甘くて冷たい小豆が缶の底に残るあの気持ち悪さが何ともいえない。
「私が飲むんじゃないのよ。でも、あの人が好きだったからね」
訝しげなカーくんに老婆は微笑む。きっとこの近くにある墓地に故人のお墓があるのだろう。こんな時、どういう顔をしたらいいのか、カーくんは未だに分からない。
「そんな顔をするんじゃないの」
「すみません」
そう謝るカーくんの背中を老婆は軽く叩くと、手招きをして、カーくんを屈ませた。不思議そうに老婆の顔を覗き込むようにしたカーくんの額を人差し指ではじいた。
「痛っ」
それ程の衝撃はなかったが、思わず声が出た。カーくんが反射的に額に手を当てると老婆はほほほ、と笑った。カーくんはどの年齢層にも支持される美形である。黒田家の最寄の商店街ではファンクラブが密かに設立されていると専らの噂である。そんな男にいきなりでこぴんをかますとは……この老婆、ただの婆さんではない。
次回 「た ただの婆さん(後編)」
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Comments
No title
No title
でこぴんを喰らうカーくんというのは、
なかなか面白い構図だよねぇ(笑)
どうやら私は、老婆を出すのが好きみたいです。
何回も「由紀緒」という過去のキャラと名前を
打ち間違えましたが、チャーミングなお婆さまが書けて
満足してます。
「つめた〜い おしるこ」は私の創作です。
今のところは、見たことないなぁ。
缶のおしるこは飲んだことあるんだけどね☆
なかなか面白い構図だよねぇ(笑)
どうやら私は、老婆を出すのが好きみたいです。
何回も「由紀緒」という過去のキャラと名前を
打ち間違えましたが、チャーミングなお婆さまが書けて
満足してます。
「つめた〜い おしるこ」は私の創作です。
今のところは、見たことないなぁ。
缶のおしるこは飲んだことあるんだけどね☆
No title
由紀緒さん!
懐かしいですね〜。夏葵さんの書くおばあちゃんは皆上品な感じで、大好きです。
「つめた〜いおしるこ」は創作なんですか〜。実際にあったら、売れるかどうかは微妙なところかもしれないですね(笑)。缶のおしるこは、私は飲んだことないのですが、おいしいのでしょうか・・・・・・?
懐かしいですね〜。夏葵さんの書くおばあちゃんは皆上品な感じで、大好きです。
「つめた〜いおしるこ」は創作なんですか〜。実際にあったら、売れるかどうかは微妙なところかもしれないですね(笑)。缶のおしるこは、私は飲んだことないのですが、おいしいのでしょうか・・・・・・?
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そしてやっぱり資金繰りが懸案事項のようですね。とすると、今回はスポンサー探しのお話になるのかな?
お題、早くも前編で登場です。カーくんにでこぴんするなんて、確かにこのおばあさんは「ただの婆さん」じゃないですね! というか、でこぴんて(笑)。この図はかなり微笑ましいなぁ。
「つめた〜いおしるこ」って、実際にあるんですか?