ものぐさや
悪役が主役の『戦隊もの』小説
| HOME |
よ 夜を盗みに来る男(後編)
「何? 改まって〜」
いつになく真剣なゼリーフィッシャーに母は湯飲みをテーブルにおいて、息子の方に膝を向けて座りなおした。
「俺……転職しようと思うんだ」
「どこにだ? 何で?」
父がいつものふざけた口調から、厳しい父親の口調になる。普段からこうしていれば父親として尊敬できるのに、とゼリーフィッシャーはこっそり思った。
「宇宙人だけの会社を作るっていう話があって……俺、やってみたいんだ。折角親父に紹介してもらった研究所だし、やっぱり親父には話を通しておかないといけないと思ったんだ」
今のゼリーフィッシャーの勤め先は父によって紹介されたところだった。父は海洋生物学を専門にしていて、今では一つの研究所のセンター長をしている。母も同じく研究員をしていたが、現在は博物館で学芸員として勤めている。ちなみに弟も今度大学院を卒業して企業の研究所に就職予定である。ゼリーフィッシャーの家は研究員一家というわけなのである。
「あー、あの話、お前受けたのか」
「え?」
紹介してくれた父に迷惑がかかるのではないかと気にしていたゼリーフィッシャーは耳を疑った。
「カトルフィッシャーさんだろ? 超男前の」
「ああ、うん、そうだけど……」
『カトルフィッシャー』ことカーくんは、ウルトラハイパーミラクル男前と呼んでも差し支えないと思う。いや、それよりも今の発言で問題なのは、ゼリーフィッシャーの父がカーくんと面識があるということである。
「蒼夜のことを紹介したのは僕だからねぇ」
「はあ?」
「面白そうだったんだけど、僕も年だしさ。センター長もやってるし。それなら、蒼夜が参加しないかなーって」
あはは、と笑う父にゼリーフィッシャーは何だか物凄く腹が立った。少しは父に悪いと思った自分が悔しい。
「本当にやるとは思わなかったけどねー。あ、大丈夫、僕のほうからは上手く言っておくし」
自分の父は食わせ者だと、分かっていたはずだった。ゼリーフィッシャーが小さいころから、面白いと思えば平気で嘘を子供に教えて楽しんだりしていた。
「サンタクロースは十二月二十五日の夜を盗みに来る男なんだよ。あの白い袋には盗んだ夜が入ってるんだ」と父は言い、宇宙銀河通販で取り寄せたリアル立体ホログラフィ映写装置でクリスマスイブにマンションのベランダの外にサンタクロースを映し出し、白夜を演出して見せたこともある。当事、小学生だったゼリーフィッシャーは純粋に信じ、盗まれた夜がどうなってしまうのかと本気で心配していた。真相を知ったのはだいぶ大きくになってからである。今でも、クリスマスに赤い服に白い袋を持ったサンタの格好をした人を見かけると夜を盗んでくれるなよ、とつい思ってしまう。
「面白いそうだなー、いいなー」
『面白い』ことが父の価値判断基準と分かっていても、それでも、言わずにはいられない。
「このくそ親父がっ!」
父の掌の上で遊ばれている自分が情けない。毎日顔をあわせていたら、我慢できないとゼリーフィッシャーは思う。でも、同時に、適わない存在でいてくれることが誇らしくもある。
「怒らないでくれよ、マイスウィートサン〜」
抱きつこうとする父を押しのけつつ、新しい会社の面白さを思い切り語ってやろうとゼリーフィッシャーは思うのだった。その位の自慢、きっとしてもいいはずだ。
「今に見てろよ」
そう呟いたゼリーフィッシャーの言葉を聞いた父は、これでまた暫く息子で遊べるなとほくそ笑むのであった。
次回 「た ただの婆さん(前編)」
いつになく真剣なゼリーフィッシャーに母は湯飲みをテーブルにおいて、息子の方に膝を向けて座りなおした。
「俺……転職しようと思うんだ」
「どこにだ? 何で?」
父がいつものふざけた口調から、厳しい父親の口調になる。普段からこうしていれば父親として尊敬できるのに、とゼリーフィッシャーはこっそり思った。
「宇宙人だけの会社を作るっていう話があって……俺、やってみたいんだ。折角親父に紹介してもらった研究所だし、やっぱり親父には話を通しておかないといけないと思ったんだ」
今のゼリーフィッシャーの勤め先は父によって紹介されたところだった。父は海洋生物学を専門にしていて、今では一つの研究所のセンター長をしている。母も同じく研究員をしていたが、現在は博物館で学芸員として勤めている。ちなみに弟も今度大学院を卒業して企業の研究所に就職予定である。ゼリーフィッシャーの家は研究員一家というわけなのである。
「あー、あの話、お前受けたのか」
「え?」
紹介してくれた父に迷惑がかかるのではないかと気にしていたゼリーフィッシャーは耳を疑った。
「カトルフィッシャーさんだろ? 超男前の」
「ああ、うん、そうだけど……」
『カトルフィッシャー』ことカーくんは、ウルトラハイパーミラクル男前と呼んでも差し支えないと思う。いや、それよりも今の発言で問題なのは、ゼリーフィッシャーの父がカーくんと面識があるということである。
「蒼夜のことを紹介したのは僕だからねぇ」
「はあ?」
「面白そうだったんだけど、僕も年だしさ。センター長もやってるし。それなら、蒼夜が参加しないかなーって」
あはは、と笑う父にゼリーフィッシャーは何だか物凄く腹が立った。少しは父に悪いと思った自分が悔しい。
「本当にやるとは思わなかったけどねー。あ、大丈夫、僕のほうからは上手く言っておくし」
自分の父は食わせ者だと、分かっていたはずだった。ゼリーフィッシャーが小さいころから、面白いと思えば平気で嘘を子供に教えて楽しんだりしていた。
「サンタクロースは十二月二十五日の夜を盗みに来る男なんだよ。あの白い袋には盗んだ夜が入ってるんだ」と父は言い、宇宙銀河通販で取り寄せたリアル立体ホログラフィ映写装置でクリスマスイブにマンションのベランダの外にサンタクロースを映し出し、白夜を演出して見せたこともある。当事、小学生だったゼリーフィッシャーは純粋に信じ、盗まれた夜がどうなってしまうのかと本気で心配していた。真相を知ったのはだいぶ大きくになってからである。今でも、クリスマスに赤い服に白い袋を持ったサンタの格好をした人を見かけると夜を盗んでくれるなよ、とつい思ってしまう。
「面白いそうだなー、いいなー」
『面白い』ことが父の価値判断基準と分かっていても、それでも、言わずにはいられない。
「このくそ親父がっ!」
父の掌の上で遊ばれている自分が情けない。毎日顔をあわせていたら、我慢できないとゼリーフィッシャーは思う。でも、同時に、適わない存在でいてくれることが誇らしくもある。
「怒らないでくれよ、マイスウィートサン〜」
抱きつこうとする父を押しのけつつ、新しい会社の面白さを思い切り語ってやろうとゼリーフィッシャーは思うのだった。その位の自慢、きっとしてもいいはずだ。
「今に見てろよ」
そう呟いたゼリーフィッシャーの言葉を聞いた父は、これでまた暫く息子で遊べるなとほくそ笑むのであった。
次回 「た ただの婆さん(前編)」
<<た ただの婆さん(前編) | ホーム | よ 夜を盗みに来る男(前編)>>
Comments
No title
No title
くらら親子のような関係はよいなーと思ったり。
くらら父はふざけて見えて、自分にも子供にも
厳しい人なんだろうなぁと思ってます。
弟も出そうと思いましたが、人が多すぎるようなので今回は諦めました。ちなみに、弟は「橙夜(トウヤ)」という、これまた芸名のような名前なんです。後で、理由は話に織り込みたいと思ってます。
くらら父はふざけて見えて、自分にも子供にも
厳しい人なんだろうなぁと思ってます。
弟も出そうと思いましたが、人が多すぎるようなので今回は諦めました。ちなみに、弟は「橙夜(トウヤ)」という、これまた芸名のような名前なんです。後で、理由は話に織り込みたいと思ってます。
No title
弟さんまでいるんですか! わりと家族が多いんですね〜、海月家。
弟さんに対してもくらら父は「マイスウィートサン!」なんてやってるんでしょうか。それともくらら限定?(笑)
「橙夜」という名前も確かに「蒼夜」に並んで芸名っぽいです。この名前の由来は今後の話で聞けるそうなので、楽しみにしていますね☆ もしかして弟さん自身が話の中に登場してくるのでしょうか。
弟さんに対してもくらら父は「マイスウィートサン!」なんてやってるんでしょうか。それともくらら限定?(笑)
「橙夜」という名前も確かに「蒼夜」に並んで芸名っぽいです。この名前の由来は今後の話で聞けるそうなので、楽しみにしていますね☆ もしかして弟さん自身が話の中に登場してくるのでしょうか。
Comment Form
Trackback
| HOME |



「夜を盗みにくる男」をサンタクロースにするとは、夏葵さん、相変わらずお題の処理の仕方がうまいです!
今回の個人的ヒットな台詞:超男前(←まさにそんな感じ!)