ものぐさや
悪役が主役の『戦隊もの』小説
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ぬ ぬしは逃げた(特別番外〜トラレン過去編〜)
「あっ、先輩」
呼ばれて振り向いた瞬間、赤田は後悔した。そこにいたのは、お騒がせ実習生、青木渡だった。青木はがっしりとした体躯に四角い顔、大学ではラグビー部だったらしく、見かけだけなら頼りになりそうな男だ。
「なんだよ」
赤田は面倒な奴に見つかったとばかりに返事をした。そんな内心を察することなく青木は駆け寄ってきた。すでに、自分の起こした騒動のことは忘れたらしい。
「なんでこんなところにいるんですか?」
「仕方なく、だよ」
「はぁ?」
赤田は仕方なく、青木以外にも説明しているような台詞を言う羽目になった。
「よーく聞けよ。俺は、長年の友人の代わりでな、警察大学校に逮捕術を教えに来ているんだよ。ここで、俺のところの交番に実習に来て、ひと騒動起こしたお前と会ったのはたまたま、だ」
赤田は説明しているうちに、交番に遅刻ぎりぎりに駆け込んできた青木の様子がよみがえって来た。道を聞かれては反対を教え、挙句の果てにはパトロールに行って迷子になったのである。交番で一番若かった赤田は、道端で泣いている警官を交番まで連れて帰るというあまり楽しくない経験をさせられた。
「先輩が学校にいるんで、もしかしたら同級生だったのかと思いました〜」
「んなわけあるかよ」
赤田は青木に突っ込みながら、時計を見た。次の授業がもう直ぐ始まる。
「じゃ、程ほどに頑張れ」
そして、俺と同じ部署には来るなよ、と内心で付け加えた。しかし、教室に向かおうとすると、青木が着いてくる。
「なんだよ?」
「俺、次が逮捕術なんですよ!」
元気一杯に答える答える青木と一緒に、赤田は実習室に入った。
「佐藤教官の代わりに今日、逮捕術を教える赤田です」
そう言って教室を見回すと、青木は後ろの方にいた。気のせいでなければ、おどおどとしている気がする。
「先生は、強いんですかー?」
クラスのリーダー格の男は赤田の外見を見て、馬鹿にした野次をとばす。赤田はにっこり笑って、答えない。
「では、授業を始めます」
ホワイトボードに図を描いたり、一番前にいる生徒に協力してもらって実際の手順を教える。手首をひねり挙げて、手錠をかける実習を二人一組でやらせて、授業は終わった。
「では、続きは佐藤教官に教えていただいてくださいね」
無事、授業を終わらせて赤田は教室を後にした。リーダー格の男は『俺はキャリアになんだよ! つまんねぇ授業だな!』と聞こえよがしに話しているが、特に気にせず職員室に戻ろうとした……が、
「あいつ、青木に絡んでたな」
視界の端にとらえた青木の姿が目の前にちらつく。青木のようなタイプはリーダー格のような男にとっては目障りなのだろう。赤田とて、青木のようなタイプが好きかと聞かれれば、『あいつは手がかかって仕方ない』としか答えられない。でも、気にかかる。
「仕方ない……行くか」
次の授業がないことを確認すると、赤田は自分も通った校舎をまた歩き出した。
その頃、青木は自分のリーダー格、新堂に空き室に連れ込まれ、難癖を付けられていた。体は大きいのに、気が弱いというのがどうも新堂の癇にさわるらしい。事あるごとに呼びと出されては殴られる。しかし、体が強いので、大きな怪我はしない。
「赤田って言うのとは知り合いかよ?」
少し見上げるようにするのも嫌らしく、青木の襟首を掴んで引きずりおろしている。
「先輩が何か?」
慣れっこになっている青木はまたか、と思ってのんびりと答えてた。少々憂鬱なのは確かだけれど、もう諦めている。
「あいつ、強くもないのに教えに来たんじゃねぇの?」
「仮にも教官に向かってその口に聞き方はひどいよ」
「うるせーよっ」
腹に久しぶりに重い一発を食らった。後ろの壁に押し付けるようにされたので、いつもよりダメージは大きい。内臓系は鍛えられないから弱いんだよ、と思った。しかしまぁ、腹筋が守ってくれてよかった。背中からだともうちょっと効いていただろう。青木は壁伝いに崩れ落ちた。木の床が冷たくて気持ちよい。
「新堂君、そういうのはよくないよ? 私に直接聞いたらいいのに」
空き教室のドアを音もなく開けて、赤田は入ってきた。そして、きっちりしめるとドアに鍵をかけてしまった。新堂は突然の侵入者に驚いたようだった。
「何のつもりだよ?」
「別に、強いかどうかを聞きたいみたいだからお答えしようかと思ってね。あのさ、無抵抗の人間殴るなんて最低なことだよ?」
一歩ずつ新堂に近付く赤田を、青木は見つめていた。感情が全く読み取れない。
「な、なんだよ」
「青木、黙っとけよ」
焦る新堂には答えず、赤田は青木に一言告げた。
「この野郎っ!」
先に手を出してきたのは新堂だった。青木を離すと赤田に殴りかかる。顔を殴ろうとした新堂の右手首を赤田はとっさに掴んだ。
「痛っ」
「ま、クラスのぬしは逃げたりしないよな」
ねじり挙げて、左手も掴んで封じる。さっきまでの授業でつかっていた手錠を後ろ手にしてかけた。首の後ろに手刀を一発入れると、新堂は気を失った。崩れる体を支えようとした時に間違って鳩尾に膝蹴りを入れてしまったのは事故である。
「まーったく、社会人になるというのに幼稚なんだから」
赤田はしゃがみこんでいる青木を見つけて笑った。腰の抜けた青木に手を伸ばす。
「ほら、立てよ」
「は、はい……」
どうにかつかまって立った青木は、まだふらつくようだった。
「おいおい、大丈夫か?」
「慣れてますから」
「慣れてるってな……ま、いいや、これからも頑張れよ」
そういうと赤田は鍵を開けて空き教室から出て行った。
「強い人って、ああいう人のことをいうのかな」
気絶した新堂を見下ろして青木はポツリと呟いた。殴られたところはまだ少し痛い。でも、いつもより何だか気分はすっとした。
「あ、新堂の手錠、外して後で職員室もって来てくれよ」
ドアからぴょこりと頭だけ出して青木にそう告げた赤田は、青木をことを文句を言いながら面倒見てくれるいつもの赤田だった。この人みたいな警察官になりたい、と青木は思った。
次回『る ルパートさん出番です』
呼ばれて振り向いた瞬間、赤田は後悔した。そこにいたのは、お騒がせ実習生、青木渡だった。青木はがっしりとした体躯に四角い顔、大学ではラグビー部だったらしく、見かけだけなら頼りになりそうな男だ。
「なんだよ」
赤田は面倒な奴に見つかったとばかりに返事をした。そんな内心を察することなく青木は駆け寄ってきた。すでに、自分の起こした騒動のことは忘れたらしい。
「なんでこんなところにいるんですか?」
「仕方なく、だよ」
「はぁ?」
赤田は仕方なく、青木以外にも説明しているような台詞を言う羽目になった。
「よーく聞けよ。俺は、長年の友人の代わりでな、警察大学校に逮捕術を教えに来ているんだよ。ここで、俺のところの交番に実習に来て、ひと騒動起こしたお前と会ったのはたまたま、だ」
赤田は説明しているうちに、交番に遅刻ぎりぎりに駆け込んできた青木の様子がよみがえって来た。道を聞かれては反対を教え、挙句の果てにはパトロールに行って迷子になったのである。交番で一番若かった赤田は、道端で泣いている警官を交番まで連れて帰るというあまり楽しくない経験をさせられた。
「先輩が学校にいるんで、もしかしたら同級生だったのかと思いました〜」
「んなわけあるかよ」
赤田は青木に突っ込みながら、時計を見た。次の授業がもう直ぐ始まる。
「じゃ、程ほどに頑張れ」
そして、俺と同じ部署には来るなよ、と内心で付け加えた。しかし、教室に向かおうとすると、青木が着いてくる。
「なんだよ?」
「俺、次が逮捕術なんですよ!」
元気一杯に答える答える青木と一緒に、赤田は実習室に入った。
「佐藤教官の代わりに今日、逮捕術を教える赤田です」
そう言って教室を見回すと、青木は後ろの方にいた。気のせいでなければ、おどおどとしている気がする。
「先生は、強いんですかー?」
クラスのリーダー格の男は赤田の外見を見て、馬鹿にした野次をとばす。赤田はにっこり笑って、答えない。
「では、授業を始めます」
ホワイトボードに図を描いたり、一番前にいる生徒に協力してもらって実際の手順を教える。手首をひねり挙げて、手錠をかける実習を二人一組でやらせて、授業は終わった。
「では、続きは佐藤教官に教えていただいてくださいね」
無事、授業を終わらせて赤田は教室を後にした。リーダー格の男は『俺はキャリアになんだよ! つまんねぇ授業だな!』と聞こえよがしに話しているが、特に気にせず職員室に戻ろうとした……が、
「あいつ、青木に絡んでたな」
視界の端にとらえた青木の姿が目の前にちらつく。青木のようなタイプはリーダー格のような男にとっては目障りなのだろう。赤田とて、青木のようなタイプが好きかと聞かれれば、『あいつは手がかかって仕方ない』としか答えられない。でも、気にかかる。
「仕方ない……行くか」
次の授業がないことを確認すると、赤田は自分も通った校舎をまた歩き出した。
その頃、青木は自分のリーダー格、新堂に空き室に連れ込まれ、難癖を付けられていた。体は大きいのに、気が弱いというのがどうも新堂の癇にさわるらしい。事あるごとに呼びと出されては殴られる。しかし、体が強いので、大きな怪我はしない。
「赤田って言うのとは知り合いかよ?」
少し見上げるようにするのも嫌らしく、青木の襟首を掴んで引きずりおろしている。
「先輩が何か?」
慣れっこになっている青木はまたか、と思ってのんびりと答えてた。少々憂鬱なのは確かだけれど、もう諦めている。
「あいつ、強くもないのに教えに来たんじゃねぇの?」
「仮にも教官に向かってその口に聞き方はひどいよ」
「うるせーよっ」
腹に久しぶりに重い一発を食らった。後ろの壁に押し付けるようにされたので、いつもよりダメージは大きい。内臓系は鍛えられないから弱いんだよ、と思った。しかしまぁ、腹筋が守ってくれてよかった。背中からだともうちょっと効いていただろう。青木は壁伝いに崩れ落ちた。木の床が冷たくて気持ちよい。
「新堂君、そういうのはよくないよ? 私に直接聞いたらいいのに」
空き教室のドアを音もなく開けて、赤田は入ってきた。そして、きっちりしめるとドアに鍵をかけてしまった。新堂は突然の侵入者に驚いたようだった。
「何のつもりだよ?」
「別に、強いかどうかを聞きたいみたいだからお答えしようかと思ってね。あのさ、無抵抗の人間殴るなんて最低なことだよ?」
一歩ずつ新堂に近付く赤田を、青木は見つめていた。感情が全く読み取れない。
「な、なんだよ」
「青木、黙っとけよ」
焦る新堂には答えず、赤田は青木に一言告げた。
「この野郎っ!」
先に手を出してきたのは新堂だった。青木を離すと赤田に殴りかかる。顔を殴ろうとした新堂の右手首を赤田はとっさに掴んだ。
「痛っ」
「ま、クラスのぬしは逃げたりしないよな」
ねじり挙げて、左手も掴んで封じる。さっきまでの授業でつかっていた手錠を後ろ手にしてかけた。首の後ろに手刀を一発入れると、新堂は気を失った。崩れる体を支えようとした時に間違って鳩尾に膝蹴りを入れてしまったのは事故である。
「まーったく、社会人になるというのに幼稚なんだから」
赤田はしゃがみこんでいる青木を見つけて笑った。腰の抜けた青木に手を伸ばす。
「ほら、立てよ」
「は、はい……」
どうにかつかまって立った青木は、まだふらつくようだった。
「おいおい、大丈夫か?」
「慣れてますから」
「慣れてるってな……ま、いいや、これからも頑張れよ」
そういうと赤田は鍵を開けて空き教室から出て行った。
「強い人って、ああいう人のことをいうのかな」
気絶した新堂を見下ろして青木はポツリと呟いた。殴られたところはまだ少し痛い。でも、いつもより何だか気分はすっとした。
「あ、新堂の手錠、外して後で職員室もって来てくれよ」
ドアからぴょこりと頭だけ出して青木にそう告げた赤田は、青木をことを文句を言いながら面倒見てくれるいつもの赤田だった。この人みたいな警察官になりたい、と青木は思った。
次回『る ルパートさん出番です』
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Comments
No title
No title
コメント、ありがとうございます。ブラック・サンダーを気に入ってもらえて本当に嬉しいです〜。
キャラクター全員に愛情を注いでいるので、個々に見せ場を作ってあげたいと思ってます。くらら、待ってろよ!(あれ? 予告?)マイホームパパ編は反応が思いのほか良くて、びっくりしてます。ギャグ路線から離れることも多々ありますが、これからも見守ってくださいませ〜。行き当たりばったりですが、愛のある限り書き続けます!
誤字脱字、難読漢字はもう少し気をつけるようにしたいと思います。指摘してくれてありがとう〜!
沙月さんのサイトの感想、後で書き込みにいきますね♪
キャラクター全員に愛情を注いでいるので、個々に見せ場を作ってあげたいと思ってます。くらら、待ってろよ!(あれ? 予告?)マイホームパパ編は反応が思いのほか良くて、びっくりしてます。ギャグ路線から離れることも多々ありますが、これからも見守ってくださいませ〜。行き当たりばったりですが、愛のある限り書き続けます!
誤字脱字、難読漢字はもう少し気をつけるようにしたいと思います。指摘してくれてありがとう〜!
沙月さんのサイトの感想、後で書き込みにいきますね♪
No title
こんにちは☆パソコンは人差し指入力とマウスクリックしか能が無かったもので…(笑)今まで書き込みを控えさせてもらってました。
毎回楽しみながら読ませて頂いてます。
これからもお邪魔します。よろしくお願いします。
しかし、パッとしないはずの赤田さんが格好いいことをすると…?ぱっとしないなりにも、もっと特徴を教えて下さいな。
ただ私の好きなキャラは、お蔭様で順調に活躍しているので嬉しい限りです☆名前がな〜(汗)
それでは、これからも期待してるんでよろしく!
毎回楽しみながら読ませて頂いてます。
これからもお邪魔します。よろしくお願いします。
しかし、パッとしないはずの赤田さんが格好いいことをすると…?ぱっとしないなりにも、もっと特徴を教えて下さいな。
ただ私の好きなキャラは、お蔭様で順調に活躍しているので嬉しい限りです☆名前がな〜(汗)
それでは、これからも期待してるんでよろしく!
No title
鮎さん、コメントありがとうございます。
赤田はあまりかっこいいことをしたと言う意識のないキャラです。淡々としているのが、彼の味。作者一押しの男です☆
お気に入りキャラの処にコメントしてくださっても平気ですよ〜。あ、海月は「ウミヅキ」であって、「クラゲ」と読んではダメですよ(笑)そのまんまの名前、付けるわけいかないですからねぇ(何を今更)
これからも、読んでもらえると嬉しいです。
赤田はあまりかっこいいことをしたと言う意識のないキャラです。淡々としているのが、彼の味。作者一押しの男です☆
お気に入りキャラの処にコメントしてくださっても平気ですよ〜。あ、海月は「ウミヅキ」であって、「クラゲ」と読んではダメですよ(笑)そのまんまの名前、付けるわけいかないですからねぇ(何を今更)
これからも、読んでもらえると嬉しいです。
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いやーやっぱり面白いね、ブラックサンダー!
いい男が目白押し。わたしはね、たとえ名前負けしてようと、くららが好きよ。くだけた感じがカッコイイ。マイホームパパ・シュリンパーさんの話は、ほろりと来ました。愛する家族を守る姿を応援してあげたくなります。
文章力もあるな〜。平易だけど、表現力が豊かで臨場感があります。わたしも見習わねば! ただ、わずかな誤字脱字と難読漢字表記だけは一考の余地があるかも。対象読者大学生以上なら問題ないとは思いますが。
ブラックサンダー物語、これからもぜひ、書いていってください。続きが気になるぅ〜!!