ものぐさや
悪役が主役の『戦隊もの』小説
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ち ちらちらと瞬くひかり
「な、何で早紀さんが知ってるんですかー!」
あまりのことにシュリンパーの頭はついていかない。早紀に対してもひたすら丁寧語で問いかけてしまう。
「だって、そのために打ち明けようとしたんじゃないの?」
なんで驚いているのか分からない、という風に早紀は小首をかしげた。姉さん女房である早紀だが、こういう時はとても幼く見える。シュリンパーはその仕草がとても好……
「じゃなくって!」
うっかりどんなに自分の奥さんが可愛いのかを力説しそうになったシュリンパーは声を出して思考を打ち切る。深呼吸一回。大方の予想はついているが、出来れば外れてほしいと思いながら問いかける。
「俺が聞きたいのは、なんで早紀さんが転職の話を知っているのかってことです」
「え? 今日の帰りに、スカウトの人と話をしたからだよ」
心なしか、早紀が嬉しそうに見えた。早紀もあの宇宙調査員に会ったのだろう。まじまじと見たわけではないが、街ですれ違ったら思わず振り返ってしまいそうな整った地球人型だったと思う。
「そうそう、名刺もらったわよ」
それは昨日もらったの名刺と寸分の違いもないように見えた……が、シュリンパーが触れると立体ホログラムが飛び出してきた。青い光になかに、立体的な文字が浮かび上がる。自動翻訳付だから、早紀にも読めているはずである。シュリンパーは恐る恐る早紀の様子を伺った。明らかに地球のものではない名刺を見て、不気味に思わないといいのだが……
「うわー、綺麗ーっ!」
シュリンパーの心配は杞憂に終わった。早紀は子供のように目を輝かせて立体ホログラムを見ている。きらきらと時折七色にきらめいて回転する文字は深い青の光によく映える。
「沙織も志保も見てみなさい」
手のひらに宝物のようにそうっと名刺を乗せて、早紀は二人の娘の方へ差し出す。シュリンパーは気が気ではない。早紀は平気でも娘はそうとは限らないと思ったのだ。
「本当、綺麗」
「きらきらしてる……」
二人の娘は確かにシュリンパーの子供だが、それよりもまず、早紀の子供であった。怖がる所か立体ホログラムに手をかざしてみたり、名刺に他に仕掛けがないかと興味津々である。
「あのどこまで聞いたんでしょうか……?」
シュリンパーは早紀にとことん下手に出る。夫は妻に頭が上がらないが、妻は夫を馬鹿にするようなことはしないし、子供も親を尊敬している。海老山家が家庭円満である秘訣だ。
「新しく宇宙人が安心して働ける会社を創設するにあたって、直弥くんに協力して欲しいって話だったわよ」
「…………」
早紀に接触するのが早すぎるとシュリンパー思った。自分に接触したのはつい昨日のことである。男の行動は不自然なほどに早い。向こうにも何かしらの事情があるのかもしれない。
「……俺みたいに家族がいたり?」
「何か言った?」
「いや、何でもないよ」
考えていたことをうっかり口に出してしまったらしい。しかし、今は自分の家族のことを考えなくてはなるまい。シュリンパーは自分の転職について家族がどう考えているのかを確かめたかった。
「早紀さんはどう思った?」
「私は、直弥くんの好きにしたらいいと思う。ただ、今の仕事はちょっと辛いみたいだし、新しいとこでまた始めるのもいいんじゃないかな」
向いていない仕事だと早紀にぐちを零したことはなかった。しかし、気づいていて、そして黙って見守っていてくれたのだと思うと、嬉しかった。
「私は、お父さんの好きにしたらいいと思う」
「私もー」
名刺を回して遊んでいた娘たちも話を聞いていたようで、宇宙人だけの会社に入ることになっても特に構わないという。家族がこれほどすんなり受け入れてくれると思っていなかったので、シュリンパーの方が少し戸惑い気味だ。視線が宙を泳ぐ。
「あのさ、話だけでも聞いてみたらいいんじゃない?」
宇宙人だということを隠しているという負い目を感じずに働けるのは、どんな感じなんだろうか。シュリンパーは今までどんなに仲良くなってもある程度の距離をとってしまう現状が少し辛かった。
「そうだね、話だけでも聞いてみるかな」
正直、気になっている。何も今、結論を出さなきゃいけないわけじゃないとシュリンパーは自分を納得させた。異人館への地図を捨てられなかったのは、こうなる予感があったからなんだろう。小さく折りたたんだ紙を自分の鞄から取り出して広げた。
「今から行くの?」
「どうしようかな……」
場所はそれほど遠くない。車で三十分ほどで行ける場所にある。早紀はシュリンパーの手元の地図を覗き込んだ。
「私、送っていってあげようか。お酒、飲むでしょう?」
「じゃ、お願い。そんなに遅くならないようにするから」
沙織と志保も宇宙人の集まるバーが見たいと言ったが、まだ早いから言ってシュリンパーは早紀と二人で異人館に向かった。早紀はとても機嫌よく運転している。結構なスピードが出ているらしく、街頭や何か店の明かりが流れていくようだった。時折、ネオンや蛍光灯の光が早紀の横顔に映る。
「到着〜。迎えに来て欲しい時は連絡してね」
「ありがと」
ひっそりとした雰囲気のバーは入り口にアンティークランプが下がっていた。ちらちらと瞬くひかりにシュリンパーは、吸い寄せられるように歩いていった。
次回『り 理由はたったひとつだけ』
あまりのことにシュリンパーの頭はついていかない。早紀に対してもひたすら丁寧語で問いかけてしまう。
「だって、そのために打ち明けようとしたんじゃないの?」
なんで驚いているのか分からない、という風に早紀は小首をかしげた。姉さん女房である早紀だが、こういう時はとても幼く見える。シュリンパーはその仕草がとても好……
「じゃなくって!」
うっかりどんなに自分の奥さんが可愛いのかを力説しそうになったシュリンパーは声を出して思考を打ち切る。深呼吸一回。大方の予想はついているが、出来れば外れてほしいと思いながら問いかける。
「俺が聞きたいのは、なんで早紀さんが転職の話を知っているのかってことです」
「え? 今日の帰りに、スカウトの人と話をしたからだよ」
心なしか、早紀が嬉しそうに見えた。早紀もあの宇宙調査員に会ったのだろう。まじまじと見たわけではないが、街ですれ違ったら思わず振り返ってしまいそうな整った地球人型だったと思う。
「そうそう、名刺もらったわよ」
それは昨日もらったの名刺と寸分の違いもないように見えた……が、シュリンパーが触れると立体ホログラムが飛び出してきた。青い光になかに、立体的な文字が浮かび上がる。自動翻訳付だから、早紀にも読めているはずである。シュリンパーは恐る恐る早紀の様子を伺った。明らかに地球のものではない名刺を見て、不気味に思わないといいのだが……
「うわー、綺麗ーっ!」
シュリンパーの心配は杞憂に終わった。早紀は子供のように目を輝かせて立体ホログラムを見ている。きらきらと時折七色にきらめいて回転する文字は深い青の光によく映える。
「沙織も志保も見てみなさい」
手のひらに宝物のようにそうっと名刺を乗せて、早紀は二人の娘の方へ差し出す。シュリンパーは気が気ではない。早紀は平気でも娘はそうとは限らないと思ったのだ。
「本当、綺麗」
「きらきらしてる……」
二人の娘は確かにシュリンパーの子供だが、それよりもまず、早紀の子供であった。怖がる所か立体ホログラムに手をかざしてみたり、名刺に他に仕掛けがないかと興味津々である。
「あのどこまで聞いたんでしょうか……?」
シュリンパーは早紀にとことん下手に出る。夫は妻に頭が上がらないが、妻は夫を馬鹿にするようなことはしないし、子供も親を尊敬している。海老山家が家庭円満である秘訣だ。
「新しく宇宙人が安心して働ける会社を創設するにあたって、直弥くんに協力して欲しいって話だったわよ」
「…………」
早紀に接触するのが早すぎるとシュリンパー思った。自分に接触したのはつい昨日のことである。男の行動は不自然なほどに早い。向こうにも何かしらの事情があるのかもしれない。
「……俺みたいに家族がいたり?」
「何か言った?」
「いや、何でもないよ」
考えていたことをうっかり口に出してしまったらしい。しかし、今は自分の家族のことを考えなくてはなるまい。シュリンパーは自分の転職について家族がどう考えているのかを確かめたかった。
「早紀さんはどう思った?」
「私は、直弥くんの好きにしたらいいと思う。ただ、今の仕事はちょっと辛いみたいだし、新しいとこでまた始めるのもいいんじゃないかな」
向いていない仕事だと早紀にぐちを零したことはなかった。しかし、気づいていて、そして黙って見守っていてくれたのだと思うと、嬉しかった。
「私は、お父さんの好きにしたらいいと思う」
「私もー」
名刺を回して遊んでいた娘たちも話を聞いていたようで、宇宙人だけの会社に入ることになっても特に構わないという。家族がこれほどすんなり受け入れてくれると思っていなかったので、シュリンパーの方が少し戸惑い気味だ。視線が宙を泳ぐ。
「あのさ、話だけでも聞いてみたらいいんじゃない?」
宇宙人だということを隠しているという負い目を感じずに働けるのは、どんな感じなんだろうか。シュリンパーは今までどんなに仲良くなってもある程度の距離をとってしまう現状が少し辛かった。
「そうだね、話だけでも聞いてみるかな」
正直、気になっている。何も今、結論を出さなきゃいけないわけじゃないとシュリンパーは自分を納得させた。異人館への地図を捨てられなかったのは、こうなる予感があったからなんだろう。小さく折りたたんだ紙を自分の鞄から取り出して広げた。
「今から行くの?」
「どうしようかな……」
場所はそれほど遠くない。車で三十分ほどで行ける場所にある。早紀はシュリンパーの手元の地図を覗き込んだ。
「私、送っていってあげようか。お酒、飲むでしょう?」
「じゃ、お願い。そんなに遅くならないようにするから」
沙織と志保も宇宙人の集まるバーが見たいと言ったが、まだ早いから言ってシュリンパーは早紀と二人で異人館に向かった。早紀はとても機嫌よく運転している。結構なスピードが出ているらしく、街頭や何か店の明かりが流れていくようだった。時折、ネオンや蛍光灯の光が早紀の横顔に映る。
「到着〜。迎えに来て欲しい時は連絡してね」
「ありがと」
ひっそりとした雰囲気のバーは入り口にアンティークランプが下がっていた。ちらちらと瞬くひかりにシュリンパーは、吸い寄せられるように歩いていった。
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