ものぐさや
悪役が主役の『戦隊もの』小説
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へ 変人は誰だ
「さ、早紀さん!?」
シュリンパーは思わず叫んだ。
「ん〜?」
何回も寝返りを打って、姿勢を整えて早紀は体を起こした。まぶたは完全に上がりきらず、寝ぼけ眼をこすって、手探りでシュリンパーを探している。
「ああああ、あのう……」
「……直弥くん? なあに?」
うろたえるシュリンパーに早紀はのんびりと尋ねた。外巻きにはねた寝癖が、いつもより幼く見せている。
「あの、さっき、寝言」
あまりの動揺に単語でしかしゃべれない。さっきの発言の真意を汲み取ろうとしても、早紀はきょとんとシュリンパーを見つめ返すばかりである。
「何か言ってた? ごめんねぇ」
やはり寝言だったらしく、覚えていないようだ。シュリンパーはほっとして微笑んだ。
「……いや、何も。何も言ってないよ」
「そお? それならいいけどー」
早紀は再び、横になって布団を頭からかぶってしまった。シュリンパーも明日の仕事を考えて眠りに付こうと思った。
「ねえ、早紀さん……明日の帰りは早い?」
「早いよー」
「そっか。ちょっと話があるんだよ」
「んー」
早紀からは寝ぼけた返事しか返ってこなかったので、朝起きたら覚えていないかもしれないとシュリンパーは思った。それならば、それでいい。もし、早紀が覚えていたならば、自分のことを話してみようかと決意した。もともと、さして気の強くないシュリンパーだが、決断は早い。自分の知らないところで、宇宙調査員に早紀が
出会ってしまうより、自分の口で伝えるべきだと思ったのだ。
「早紀さん、いい夢を」
そっとキスを落としてから、シュリンパーも眠りに付いた。
そして翌日、目が覚めると、シュリンパーの隣に早紀はいなかった。
「!」
やはり自分の正体を見抜いて……いや、寝ぼけていたから覚えていないみたいだったし……でも、気づいていた……? シュリンパーは混乱した。早紀が早くに出るといっていたのを完全に忘れていたせいである。
「お父さ〜ん、朝ごはんだよ」
次女の志保が呼びに来たにも関わらず、シュリンパーはまだショックから立ち直れない。子供が普通に自分を呼んでくれるということは、子供にはばれていないということだろうか……?
「おはよう……お母さんは?」
「お母さんは今日は早くお仕事行ったよ〜。沙織ちゃんは朝練だって」
ニコニコと笑う子供の顔に少し安心して、シュリンパーは会社に行く準備をした。今朝は珍しく早紀がお弁当を作ったらしい。濃紺の包みを小さなバックにいれて、玄関のドアを開ける。
「最後だから、なわけないよな」
生真面目なシュリンパーは嫌な想像をしてしまう癖がある。別れる前に、というわけないじゃないかと思うのに、普段されないことをされると少し懐疑的になる。
「……お父さん?」
志保の問いかけに、シュリンパーは直ぐに不安そうな表情を消して微笑みかける。
「何でもないよ。じゃあ、行ってくるね」
「行ってらっしゃい」
仕事場に向かうまでの道に、昨日の男の姿はなかったのでシュリンパーはほっとした。自分よりも年下の外見を持つ宇宙環境調査員は妙な迫力があった。今度あったら、彼が言っていた『異人館』に強制的にでも連れて行かれそうな気がする。
会社へ向かう足取りは重い。排水溝の些細な段差に躓いて、気分は一層重くなる。しかし、早紀に作ってもらった弁当が無事なのを確かめて、今日も一日頑張ろうとシュリンパーは思った。
慣れない仕事と足の引っ張り合いの人間関係に疲れ、同僚からの飲みの誘いは『今日は私が食事当番で』とマイホームパパをアピールして帰ってきた。改めて、自宅を外から眺める。車庫に車があったので、早紀はすでに帰宅しているらしい。寝ぼけながらも早く帰ると言ったのは本当だったらしい。
「大丈夫かな……」
早紀は頭が柔らかく、順応性の高い女性であるのは良く知っている。宇宙人だというのも受け入れてくれるかもしれない。でも、もし、離婚を求められたら……家を出ていくのは自分だろうとシュリンパーは思った。嫌な想像が脳裏をよぎってしまう。家族を信じていないわけではない。しかし、自分が地球人ではないという引け目
はいつも感じずにはいられないのだ。今まで、隠してきてしまったと言う後ろめたさも手伝って、なかなか家に入ることが出来ない。
玄関ドアの前で、うろうろ歩き、吊り下げ型のプランターに咲く花を見つめてみたりするシュリンパーは知らない人が見かけたら、警察に通報するくらいには怪しかった。幸い、ご近所づきあいはまめにしているので、シュリンパーの性格を近所の人は「今日もだんなさんが悩んでるよー」と微笑ましく見守っていた。
「そろそろ、入ってくれば?」
笑いを含んだ声でインターフォンから早紀の声が聞こえてきた。玄関先の人が確認できるカメラを付けていたのをシュリンパーはすっかり忘れていた。
「さささささ、早紀さんっ! ずっと見て……た?」
聞くまでもないが、もしかしたら見てなかったかもしれないと一縷の望みをかけて聞いてみた。しかし、けらけらと笑う早紀の声に、全てを見られていたのだとシュリンパーは赤くなった。
「家の前の変人は誰だよ〜って見てたよ♪」
「そう……」
たぶん、録画されてしまったのだろうな、と思った。明らかに不審者の自分の姿なんて見たくはないのだが。
「おっかえり〜」
「ただいま、早紀さん」
この台詞を、明日も言えるだろうかと思うとシュリンパーは少し切なくなった。しかし、今日、真実を伝えようという決意だけは変わらなかった。
次回 『と 取り返しのつかない失態』
シュリンパーは思わず叫んだ。
「ん〜?」
何回も寝返りを打って、姿勢を整えて早紀は体を起こした。まぶたは完全に上がりきらず、寝ぼけ眼をこすって、手探りでシュリンパーを探している。
「ああああ、あのう……」
「……直弥くん? なあに?」
うろたえるシュリンパーに早紀はのんびりと尋ねた。外巻きにはねた寝癖が、いつもより幼く見せている。
「あの、さっき、寝言」
あまりの動揺に単語でしかしゃべれない。さっきの発言の真意を汲み取ろうとしても、早紀はきょとんとシュリンパーを見つめ返すばかりである。
「何か言ってた? ごめんねぇ」
やはり寝言だったらしく、覚えていないようだ。シュリンパーはほっとして微笑んだ。
「……いや、何も。何も言ってないよ」
「そお? それならいいけどー」
早紀は再び、横になって布団を頭からかぶってしまった。シュリンパーも明日の仕事を考えて眠りに付こうと思った。
「ねえ、早紀さん……明日の帰りは早い?」
「早いよー」
「そっか。ちょっと話があるんだよ」
「んー」
早紀からは寝ぼけた返事しか返ってこなかったので、朝起きたら覚えていないかもしれないとシュリンパーは思った。それならば、それでいい。もし、早紀が覚えていたならば、自分のことを話してみようかと決意した。もともと、さして気の強くないシュリンパーだが、決断は早い。自分の知らないところで、宇宙調査員に早紀が
出会ってしまうより、自分の口で伝えるべきだと思ったのだ。
「早紀さん、いい夢を」
そっとキスを落としてから、シュリンパーも眠りに付いた。
そして翌日、目が覚めると、シュリンパーの隣に早紀はいなかった。
「!」
やはり自分の正体を見抜いて……いや、寝ぼけていたから覚えていないみたいだったし……でも、気づいていた……? シュリンパーは混乱した。早紀が早くに出るといっていたのを完全に忘れていたせいである。
「お父さ〜ん、朝ごはんだよ」
次女の志保が呼びに来たにも関わらず、シュリンパーはまだショックから立ち直れない。子供が普通に自分を呼んでくれるということは、子供にはばれていないということだろうか……?
「おはよう……お母さんは?」
「お母さんは今日は早くお仕事行ったよ〜。沙織ちゃんは朝練だって」
ニコニコと笑う子供の顔に少し安心して、シュリンパーは会社に行く準備をした。今朝は珍しく早紀がお弁当を作ったらしい。濃紺の包みを小さなバックにいれて、玄関のドアを開ける。
「最後だから、なわけないよな」
生真面目なシュリンパーは嫌な想像をしてしまう癖がある。別れる前に、というわけないじゃないかと思うのに、普段されないことをされると少し懐疑的になる。
「……お父さん?」
志保の問いかけに、シュリンパーは直ぐに不安そうな表情を消して微笑みかける。
「何でもないよ。じゃあ、行ってくるね」
「行ってらっしゃい」
仕事場に向かうまでの道に、昨日の男の姿はなかったのでシュリンパーはほっとした。自分よりも年下の外見を持つ宇宙環境調査員は妙な迫力があった。今度あったら、彼が言っていた『異人館』に強制的にでも連れて行かれそうな気がする。
会社へ向かう足取りは重い。排水溝の些細な段差に躓いて、気分は一層重くなる。しかし、早紀に作ってもらった弁当が無事なのを確かめて、今日も一日頑張ろうとシュリンパーは思った。
慣れない仕事と足の引っ張り合いの人間関係に疲れ、同僚からの飲みの誘いは『今日は私が食事当番で』とマイホームパパをアピールして帰ってきた。改めて、自宅を外から眺める。車庫に車があったので、早紀はすでに帰宅しているらしい。寝ぼけながらも早く帰ると言ったのは本当だったらしい。
「大丈夫かな……」
早紀は頭が柔らかく、順応性の高い女性であるのは良く知っている。宇宙人だというのも受け入れてくれるかもしれない。でも、もし、離婚を求められたら……家を出ていくのは自分だろうとシュリンパーは思った。嫌な想像が脳裏をよぎってしまう。家族を信じていないわけではない。しかし、自分が地球人ではないという引け目
はいつも感じずにはいられないのだ。今まで、隠してきてしまったと言う後ろめたさも手伝って、なかなか家に入ることが出来ない。
玄関ドアの前で、うろうろ歩き、吊り下げ型のプランターに咲く花を見つめてみたりするシュリンパーは知らない人が見かけたら、警察に通報するくらいには怪しかった。幸い、ご近所づきあいはまめにしているので、シュリンパーの性格を近所の人は「今日もだんなさんが悩んでるよー」と微笑ましく見守っていた。
「そろそろ、入ってくれば?」
笑いを含んだ声でインターフォンから早紀の声が聞こえてきた。玄関先の人が確認できるカメラを付けていたのをシュリンパーはすっかり忘れていた。
「さささささ、早紀さんっ! ずっと見て……た?」
聞くまでもないが、もしかしたら見てなかったかもしれないと一縷の望みをかけて聞いてみた。しかし、けらけらと笑う早紀の声に、全てを見られていたのだとシュリンパーは赤くなった。
「家の前の変人は誰だよ〜って見てたよ♪」
「そう……」
たぶん、録画されてしまったのだろうな、と思った。明らかに不審者の自分の姿なんて見たくはないのだが。
「おっかえり〜」
「ただいま、早紀さん」
この台詞を、明日も言えるだろうかと思うとシュリンパーは少し切なくなった。しかし、今日、真実を伝えようという決意だけは変わらなかった。
次回 『と 取り返しのつかない失態』
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