ものぐさや
悪役が主役の『戦隊もの』小説
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ほ ほう、それが正体か
一方、駅で見知らぬ男に声をかけられたシュリンパーは、玄関先で三十二年ローンで買った我が家を眺めていた。
決して大きいとはいえない家だが、念願のマイホーム。大学で知り合って結婚した妻と中学一年と小学四年の娘が待っている。上の娘は思春期にさしかかっており、最近会話が少なくなってきている。
「今更だよな……」
宇宙人であることは、これまでひたむきに隠してきた。ばれそうな時も今まで何回もあった。しかし、どうにかやりすごして大学を卒業し、今の会社に就職した。開発希望にも関わらず営業を回されて、ちょっと仕事は憂鬱だが、家族の幸せは自分の幸せだと思って日々働いている。
「まさか、宇宙調査員にあってしまうなんて思わなかったな」
玄関照明を見上げてぶつぶつと呟いていると、玄関のドアがいきなり開いた。
「お帰りなさい!」
ドアから出てきたのはショートカットの活発そうな女性だった。大きな瞳には好奇心と悪戯心が詰まっている。この女性がシュリンパーの妻、早紀である。
「たたたた、ただいまですっ」
シュリンパーは動揺して、思わず丁寧語になってしまった。学生時代、同じサークルの先輩であった早紀に対して、時折後輩のようになってしまう時がある。
「直弥くん、何びっくりしてるの?」
早紀は驚いて固まっているシュリンパーを指差してけたけた笑う。シュリンパーは地球人名を『海老山 直弥』としていた。地球に来て以来、二十年も名乗っているので、本名よりも慣れている名前だ。
「いきなりドアが開いたらびっくりしますよ……」
「そう? とりあえず、早く家に入りなよ」
早紀はそういうとシュリンパーの手をひいて、家に入った。今日は早紀の仕事帰りが早かったので、夕食の担当は自動的に早紀になっていた。先に帰ってきた方が夕食担当というのが海老山家のルールである。ダイニングにはハンバーグとサラダ、コンソメスープがすでに並んでいた。
「頑張ったでしょ?」
そう言って笑う早紀を見て、シュリンパーは何としてでもこの生活は守らなければならないと思った。
「うん。すごくおいしそうだ」
スーツの上着を脱いで、ハンガーにかけ、飲み物の用意をしに台所へ向かった。
「沙織ー! 志保ー! ご飯よー!」
早紀が二階にいる子供たちを呼び、四人揃っての夕飯を食べた。忙しい妻の手料理を食べられることはそう多くないので、ハンバーグを食べながら、シュリンパーは幸せをかみ締めた。
「このごろ、部活はどうなんだ?」
中学一年の長女、沙織に話しかけてみるが、答えは、
「普通」
の一言。この年頃の女の子は父親とあまり話さなくなったりするものだと思ってもかなしいことこの上ない。沙織は早紀に似て、体を動かすことが好きな女の子だ。バスケットボール部では色々問題もあるらしく、いらいらしていることが多いのでシュリンパーは心配している。
「志保、手芸部はどうだい? 新しいこと出来るようになった?」
「あのね、私、レース編みが出来るようになったの〜。ビーズアクセサリを作るの慣れてきたよ」
小学四年の次女、志保は父親に似た少しおっとりしたタイプで、長めの黒い髪を三つ編みに結っている。シュリンパーも手芸や料理が得意なので、志保と話すときは話題に事欠かない。
和やかな夕食の後、一家団欒でテレビを見て、なんてことのない一日は終わった。しかし、ベッドで横になっても、シュリンパーは今日会った宇宙調査員が気になって寝付けなかった。妻は、娘は、自分宇宙人だと知ったらどう思うだろう……? 枕に顔をうち伏して、シュリンパーは考えた。答えは出ない。でも、今の生活は確実に変わってしまうだろう。異人館に来いと言ったあの男は何の仕事をさせようというのか。
「ん……」
先に寝付いた早紀は少し寝苦しいのか、何度も寝返りを打っている。隣を見ると間接照明の明かりでぼんやりと妻の顔が見えた。これから先、ずっと人生のパートナーでいて欲しい女性だ。地球人だと偽って結婚したことがばれたら、彼女がどう思うのかを考えるとやはり怖い。恐怖と嫌悪感に満ちた目で見られたら、正直立ち直れない。
「早紀さん、俺はね……」
宇宙人なんですよ、と寝ている早紀の髪を梳きながら言ってみようかと思った瞬間。
「ほう、それが正体か」
「!」
あまりにもタイミングの良い早紀の寝言に、シュリンパーは驚いて声も出なかった。
次回『へ 変人は誰だ』
決して大きいとはいえない家だが、念願のマイホーム。大学で知り合って結婚した妻と中学一年と小学四年の娘が待っている。上の娘は思春期にさしかかっており、最近会話が少なくなってきている。
「今更だよな……」
宇宙人であることは、これまでひたむきに隠してきた。ばれそうな時も今まで何回もあった。しかし、どうにかやりすごして大学を卒業し、今の会社に就職した。開発希望にも関わらず営業を回されて、ちょっと仕事は憂鬱だが、家族の幸せは自分の幸せだと思って日々働いている。
「まさか、宇宙調査員にあってしまうなんて思わなかったな」
玄関照明を見上げてぶつぶつと呟いていると、玄関のドアがいきなり開いた。
「お帰りなさい!」
ドアから出てきたのはショートカットの活発そうな女性だった。大きな瞳には好奇心と悪戯心が詰まっている。この女性がシュリンパーの妻、早紀である。
「たたたた、ただいまですっ」
シュリンパーは動揺して、思わず丁寧語になってしまった。学生時代、同じサークルの先輩であった早紀に対して、時折後輩のようになってしまう時がある。
「直弥くん、何びっくりしてるの?」
早紀は驚いて固まっているシュリンパーを指差してけたけた笑う。シュリンパーは地球人名を『海老山 直弥』としていた。地球に来て以来、二十年も名乗っているので、本名よりも慣れている名前だ。
「いきなりドアが開いたらびっくりしますよ……」
「そう? とりあえず、早く家に入りなよ」
早紀はそういうとシュリンパーの手をひいて、家に入った。今日は早紀の仕事帰りが早かったので、夕食の担当は自動的に早紀になっていた。先に帰ってきた方が夕食担当というのが海老山家のルールである。ダイニングにはハンバーグとサラダ、コンソメスープがすでに並んでいた。
「頑張ったでしょ?」
そう言って笑う早紀を見て、シュリンパーは何としてでもこの生活は守らなければならないと思った。
「うん。すごくおいしそうだ」
スーツの上着を脱いで、ハンガーにかけ、飲み物の用意をしに台所へ向かった。
「沙織ー! 志保ー! ご飯よー!」
早紀が二階にいる子供たちを呼び、四人揃っての夕飯を食べた。忙しい妻の手料理を食べられることはそう多くないので、ハンバーグを食べながら、シュリンパーは幸せをかみ締めた。
「このごろ、部活はどうなんだ?」
中学一年の長女、沙織に話しかけてみるが、答えは、
「普通」
の一言。この年頃の女の子は父親とあまり話さなくなったりするものだと思ってもかなしいことこの上ない。沙織は早紀に似て、体を動かすことが好きな女の子だ。バスケットボール部では色々問題もあるらしく、いらいらしていることが多いのでシュリンパーは心配している。
「志保、手芸部はどうだい? 新しいこと出来るようになった?」
「あのね、私、レース編みが出来るようになったの〜。ビーズアクセサリを作るの慣れてきたよ」
小学四年の次女、志保は父親に似た少しおっとりしたタイプで、長めの黒い髪を三つ編みに結っている。シュリンパーも手芸や料理が得意なので、志保と話すときは話題に事欠かない。
和やかな夕食の後、一家団欒でテレビを見て、なんてことのない一日は終わった。しかし、ベッドで横になっても、シュリンパーは今日会った宇宙調査員が気になって寝付けなかった。妻は、娘は、自分宇宙人だと知ったらどう思うだろう……? 枕に顔をうち伏して、シュリンパーは考えた。答えは出ない。でも、今の生活は確実に変わってしまうだろう。異人館に来いと言ったあの男は何の仕事をさせようというのか。
「ん……」
先に寝付いた早紀は少し寝苦しいのか、何度も寝返りを打っている。隣を見ると間接照明の明かりでぼんやりと妻の顔が見えた。これから先、ずっと人生のパートナーでいて欲しい女性だ。地球人だと偽って結婚したことがばれたら、彼女がどう思うのかを考えるとやはり怖い。恐怖と嫌悪感に満ちた目で見られたら、正直立ち直れない。
「早紀さん、俺はね……」
宇宙人なんですよ、と寝ている早紀の髪を梳きながら言ってみようかと思った瞬間。
「ほう、それが正体か」
「!」
あまりにもタイミングの良い早紀の寝言に、シュリンパーは驚いて声も出なかった。
次回『へ 変人は誰だ』
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