ものぐさや
悪役が主役の『戦隊もの』小説
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に 二枚目と三枚目
「あ、悪の」
「組織?」
シーホーサーとゼリーフィッシャーは顔を見合わせた。互いの瞳に、混乱した様子の自分が映っている。
「ええ、そうですよ」
何かおかしなことでも? とカーくんは涼しい顔をしている。そして、徐にビジネスカバンから企画書をとりだして二人に手渡した。
「私は、本気です。本当に今まで宇宙人による会社組織がなかったのが不思議だと思っていますし、これから悪の組織を作ります」
自信にあふれたカーくんの様子に二人は話だけでも聞いてみようかという気になった。
「悪の組織は三つの部隊で編制する予定です。第一部隊、第二部隊は普通の会社組織と変わらないと思っていただいて差し支えありません。そして、特殊実行部隊が直接的に悪事を働くことになります。第一、第二部隊が実行部隊のスポンサーのような役割につくと思ってください」
「で? 悪の組織をやるメリットなんなわけ?」
ゼリーフィッシャーは斜に構えてカーくんに質問することに決めた。正直、『悪の組織』に心ひかれる自分がいる。しかし、人生をここで棒に振るわけにはいかない。
「メリットは、自分の好きなことをおもいきり出来ることですね。正直、悪の組織にあこがれたことはありませんか? 私たちは宇宙人であり、地球人からは侵略者のように言われたりしますしね。
私たちはこの地球に順応して生きていけます。でも、ふとした瞬間に宇宙人としての悪戯心がうずくことはありませんか? 本能的な衝動で」
言われてみれば、心当たりがないでもないとシーホーサーは思った。宇宙人だと明かして驚かしてやりたいと思う心はどこかしらに残っている。
「地球では『戦隊もの』というジャンルが確立しています。正義の味方に悪の組織が倒されるというお決まりのパターンを踏襲することで子供に夢を与えているわけです」
「その、悪の組織をやろうっていうんだ?」
放送業界に身を置いているシーホーサーは本格的に興味が湧いてきた。戦隊ものにおいて、悪役は負けるために存在している。彼らは勝てても、勝たない。それが暗黙の了解なのだ。
「そうです。悪の組織を作って擬似的に悪事を働こうというわけです」
擬似的な悪事、というのは面白い発想だ。それを組織化して行おうとしているのがこのカトルフィッシャーという男のすごいところだとゼリーフィッシャーは思い始めていた。研究者だけあって、人並みはずれた好奇心が彼の中にはある。それでも、今ここで決めるわけにはいかない。
「なあ、一つ聞いていいか?」
「なんですか?」
「何で俺たちなわけ?」
「地球への適合度がずば抜けて高いからですよ。私は子会社を運営するのに必要な人材を探しているんです」
ゼリーフィッシャーとシーホーサーは互いに慣れ親しんだ地球人型を眺めた。確かにどこに出しても立派な地球人で、献血や健康診断も普通に出来るほどしっかり作りこんである。今の地球の技術力ならば、検査でばれるというようなことはないだろう。
「俺たちの他にも誰かいるわけ?」
「ええ、ただ今スカウト中ですよ」
シーホーサーは黙ってカーくんとゼリーフィッシャーの会話を聞いていた。見た目は二枚目と三枚目の会話。しかし、この二枚目はかなり酔狂なことを言っている。番組構成的にはおいしいな、と思ってしまうのはもはや職業病といってもいいだろう。
「返事は今すぐ、というわけではありません。よく考えてみてください」
カーくんはそれほど期待せずにいろんな宇宙人に声をかけてみるつもりだった。リストアップしてある中でゼリーフィッシャーとシーホーサーはかなりいい人材だとは思っているが、意に反して参加されては『悪の組織』なんて到底続けていけない。
「うちの奥さんにも聞いてみなきゃいけないしね」
シーホーサーは自分のやりたいことをやりなよと言ってくれる妻の顔を思い浮かべた。きっと、参加するだろうという予感はあった。
「俺も、少し考えたいな」
今やっている研究の引継ぎを考えていた。後輩の田中くんに頑張ってもらえばなんとかなるか、と現実的に算段を立てている。結局は『悪の組織』に参加したいようだという結論はすでに出ていた。
「決まったら、連絡をしてください。いつでも、お待ちしています」
手ごたえを感じたカーくんは会心の笑みを浮かべていた。
次回『ほ ほう、それが正体か』
「組織?」
シーホーサーとゼリーフィッシャーは顔を見合わせた。互いの瞳に、混乱した様子の自分が映っている。
「ええ、そうですよ」
何かおかしなことでも? とカーくんは涼しい顔をしている。そして、徐にビジネスカバンから企画書をとりだして二人に手渡した。
「私は、本気です。本当に今まで宇宙人による会社組織がなかったのが不思議だと思っていますし、これから悪の組織を作ります」
自信にあふれたカーくんの様子に二人は話だけでも聞いてみようかという気になった。
「悪の組織は三つの部隊で編制する予定です。第一部隊、第二部隊は普通の会社組織と変わらないと思っていただいて差し支えありません。そして、特殊実行部隊が直接的に悪事を働くことになります。第一、第二部隊が実行部隊のスポンサーのような役割につくと思ってください」
「で? 悪の組織をやるメリットなんなわけ?」
ゼリーフィッシャーは斜に構えてカーくんに質問することに決めた。正直、『悪の組織』に心ひかれる自分がいる。しかし、人生をここで棒に振るわけにはいかない。
「メリットは、自分の好きなことをおもいきり出来ることですね。正直、悪の組織にあこがれたことはありませんか? 私たちは宇宙人であり、地球人からは侵略者のように言われたりしますしね。
私たちはこの地球に順応して生きていけます。でも、ふとした瞬間に宇宙人としての悪戯心がうずくことはありませんか? 本能的な衝動で」
言われてみれば、心当たりがないでもないとシーホーサーは思った。宇宙人だと明かして驚かしてやりたいと思う心はどこかしらに残っている。
「地球では『戦隊もの』というジャンルが確立しています。正義の味方に悪の組織が倒されるというお決まりのパターンを踏襲することで子供に夢を与えているわけです」
「その、悪の組織をやろうっていうんだ?」
放送業界に身を置いているシーホーサーは本格的に興味が湧いてきた。戦隊ものにおいて、悪役は負けるために存在している。彼らは勝てても、勝たない。それが暗黙の了解なのだ。
「そうです。悪の組織を作って擬似的に悪事を働こうというわけです」
擬似的な悪事、というのは面白い発想だ。それを組織化して行おうとしているのがこのカトルフィッシャーという男のすごいところだとゼリーフィッシャーは思い始めていた。研究者だけあって、人並みはずれた好奇心が彼の中にはある。それでも、今ここで決めるわけにはいかない。
「なあ、一つ聞いていいか?」
「なんですか?」
「何で俺たちなわけ?」
「地球への適合度がずば抜けて高いからですよ。私は子会社を運営するのに必要な人材を探しているんです」
ゼリーフィッシャーとシーホーサーは互いに慣れ親しんだ地球人型を眺めた。確かにどこに出しても立派な地球人で、献血や健康診断も普通に出来るほどしっかり作りこんである。今の地球の技術力ならば、検査でばれるというようなことはないだろう。
「俺たちの他にも誰かいるわけ?」
「ええ、ただ今スカウト中ですよ」
シーホーサーは黙ってカーくんとゼリーフィッシャーの会話を聞いていた。見た目は二枚目と三枚目の会話。しかし、この二枚目はかなり酔狂なことを言っている。番組構成的にはおいしいな、と思ってしまうのはもはや職業病といってもいいだろう。
「返事は今すぐ、というわけではありません。よく考えてみてください」
カーくんはそれほど期待せずにいろんな宇宙人に声をかけてみるつもりだった。リストアップしてある中でゼリーフィッシャーとシーホーサーはかなりいい人材だとは思っているが、意に反して参加されては『悪の組織』なんて到底続けていけない。
「うちの奥さんにも聞いてみなきゃいけないしね」
シーホーサーは自分のやりたいことをやりなよと言ってくれる妻の顔を思い浮かべた。きっと、参加するだろうという予感はあった。
「俺も、少し考えたいな」
今やっている研究の引継ぎを考えていた。後輩の田中くんに頑張ってもらえばなんとかなるか、と現実的に算段を立てている。結局は『悪の組織』に参加したいようだという結論はすでに出ていた。
「決まったら、連絡をしてください。いつでも、お待ちしています」
手ごたえを感じたカーくんは会心の笑みを浮かべていた。
次回『ほ ほう、それが正体か』
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