ものぐさや
悪役が主役の『戦隊もの』小説
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ろ ろくな男じゃありません
カーくんはシュリンパーと分かれた後、隠れ家の的なバーに入った。通称『異人館』……シュリンパーに指定した宇宙人御用達のバーである。
「こんばんは」
薄暗い照明の中でもサングラスを外さないマスターの表情をうかがい知ることは出来ない。黒いベストに黒いズボン。一般的なバーテンダーの格好をして、カウンターの中で黙々とカクテルを作っている。
「いらっしゃいませ」
騒がしい店内でも確かに聞こえるバリトン。無愛想なわけでもないけれど、マスターは寡黙に仕事をしているのが絵になる。
「いつものお願いします」
カーくんはカウンター席に座ってボトルキープしているウィスキーを頼んだ。琥珀色の液体を流し込んで、店内を見回した。
「ゼリーフィッシャーさん、来ていませんか?」
「まだ、お見えになっていないようですね」
口元だけで判断すると、少し微笑んでいたようにも感じられる。マスターの素顔は誰も見たことがないが、かなりダンディなおじ様だという専らのうわさだ。
店内は顔なじみばかりがいるので、誰がいるのかはすぐに分かる。二十人も入ればバーは一杯になるが、奥にはかなり大規模なレストランが併設されているので問題ない。別空間に分離されているので、人型を解いた宇宙人たちはレストランで寛ぎ、人型をとったままで平気な宇宙人はバーで酒を飲む。
バーのドアにつけた鐘がちりん、となった。
「おー、マスター久しぶりー」
そう言って店内に入ってきたのは三十代前半と思しき、ラフな格好の男。サラリーマンといった感じではない。少し長めの髪を後ろでちょこっと結び、耳にはシルバーのピアスをしている。
「お久しぶりです。竜田さんはこちらで飲まれますか?」
「ああ、そうするよ」
竜田と呼ばれた男はカウンターの席に腰掛けた。隣にいるカーくんに気がついて、人懐っこい笑みを浮かべた。
「ここには最近?」
「ええ、最近通わせてもらっています」
「今まで会ったことのないのが不思議ですね」
マスターは客の会話を遮らないように、酒を出した。二人はしばらく最近の地球について話し合った。だいぶ打ち解けたところで、カーくんは竜田にも話を持ちかける。
「竜田さん……本名は?」
「まずは自分から名乗ってくださいよ」
からん、とコップの中の氷を揺らして竜田はカーくんを見た。地球人名をわざわざ名乗っているのに、本名を聞くカーくんの行動に興味が湧いた。
「カトルフィッシャーと申します」
カーくんは3Dホログラムの名刺を取り出して竜田に渡した。名刺は銀河共通名刺で、自動的に読めるような文字に翻訳される優れものだ。
「俺はシーホーサーって言います」
「シーホーサーさん、ゼリーフィッシャーさんって知ってますか?」
竜田ことシーホーサーは、悪友の顔を思い出して悪戯っぽく笑った。
「ああ、よく知ってますよ。何か用があるんですか? あいつは……」
「何かあるんですか?」
「ろくな男じゃありません」
笑顔で言い切ったシーホーサーにそれはどういう意味なのかと問いかけようとした時、異人館のドアが再び開いた。
次回『は パラボラアンテナ危機一髪』
「こんばんは」
薄暗い照明の中でもサングラスを外さないマスターの表情をうかがい知ることは出来ない。黒いベストに黒いズボン。一般的なバーテンダーの格好をして、カウンターの中で黙々とカクテルを作っている。
「いらっしゃいませ」
騒がしい店内でも確かに聞こえるバリトン。無愛想なわけでもないけれど、マスターは寡黙に仕事をしているのが絵になる。
「いつものお願いします」
カーくんはカウンター席に座ってボトルキープしているウィスキーを頼んだ。琥珀色の液体を流し込んで、店内を見回した。
「ゼリーフィッシャーさん、来ていませんか?」
「まだ、お見えになっていないようですね」
口元だけで判断すると、少し微笑んでいたようにも感じられる。マスターの素顔は誰も見たことがないが、かなりダンディなおじ様だという専らのうわさだ。
店内は顔なじみばかりがいるので、誰がいるのかはすぐに分かる。二十人も入ればバーは一杯になるが、奥にはかなり大規模なレストランが併設されているので問題ない。別空間に分離されているので、人型を解いた宇宙人たちはレストランで寛ぎ、人型をとったままで平気な宇宙人はバーで酒を飲む。
バーのドアにつけた鐘がちりん、となった。
「おー、マスター久しぶりー」
そう言って店内に入ってきたのは三十代前半と思しき、ラフな格好の男。サラリーマンといった感じではない。少し長めの髪を後ろでちょこっと結び、耳にはシルバーのピアスをしている。
「お久しぶりです。竜田さんはこちらで飲まれますか?」
「ああ、そうするよ」
竜田と呼ばれた男はカウンターの席に腰掛けた。隣にいるカーくんに気がついて、人懐っこい笑みを浮かべた。
「ここには最近?」
「ええ、最近通わせてもらっています」
「今まで会ったことのないのが不思議ですね」
マスターは客の会話を遮らないように、酒を出した。二人はしばらく最近の地球について話し合った。だいぶ打ち解けたところで、カーくんは竜田にも話を持ちかける。
「竜田さん……本名は?」
「まずは自分から名乗ってくださいよ」
からん、とコップの中の氷を揺らして竜田はカーくんを見た。地球人名をわざわざ名乗っているのに、本名を聞くカーくんの行動に興味が湧いた。
「カトルフィッシャーと申します」
カーくんは3Dホログラムの名刺を取り出して竜田に渡した。名刺は銀河共通名刺で、自動的に読めるような文字に翻訳される優れものだ。
「俺はシーホーサーって言います」
「シーホーサーさん、ゼリーフィッシャーさんって知ってますか?」
竜田ことシーホーサーは、悪友の顔を思い出して悪戯っぽく笑った。
「ああ、よく知ってますよ。何か用があるんですか? あいつは……」
「何かあるんですか?」
「ろくな男じゃありません」
笑顔で言い切ったシーホーサーにそれはどういう意味なのかと問いかけようとした時、異人館のドアが再び開いた。
次回『は パラボラアンテナ危機一髪』
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