ものぐさや
悪役が主役の『戦隊もの』小説
| HOME |
い 異人館で会いましょう
これから始まりますのは、悪の組織、『ブラック・サンダー』が創設する時のお話です……
「カーくん!」
そう叫んで走りこんできたのは、可愛らしいという形容がぴったりの男の子。茶色のふわふわとした髪と大きな目、長い睫に白い肌が夏の日差しに眩しい。細い手足がTシャツと短パンからのぞく。年頃は十二、三といったところか。
「なんです、雷太さ……うわっ」
『カーくん』と呼ばれて振り返った青年は、走りこんできた少年を抱きとめた。青年は二十代半ばといったところで、少年よりも二十センチほど背が高く、やや痩せ型。涼しげげな目元にシャープな顔のラインが知的に見える。
「例の計画、進んでる?」
カーくんを見上げて少年は笑いかける。
「ええ……でも、私を見かけたからっていきなり抱きつくのはよしてくださいね、雷太さん」
雷太はカーくんの言葉を無視して、さらにぎゅうっと抱きつく。
「だって嬉しいんだもーん」
家の中ではまだしも、外でやられたら周りの目が痛いな、とカーくんは思いつつも好意をまっすぐに伝えてくれる雷太には敵わないのであった。
日本のどこかで、新たな悪の組織が誕生しようとしていた……その名も『ブラック・サンダー』ちょっとずれた感じのネーミングがマニア心をくすぐる。
総帥は黒田雷太、十五歳。この春から高校一年生になるロリータ系美少年だ。背は十五歳男子平均よりかなりひくく、筋肉の付きにくい体とぱっちりした大きな目、ちょっと天然パーマとふわふわとした髪の毛が女の子に見えなくもない。そして、参謀にはカーくん。雷太の家の居候で実は宇宙人だ。宇宙船で不時着したときに雷太に拾われ、今に至る。
「二人って訳には行かないよね? どうやって人を集めるの?」
ブラック・サンダー仮本部こと雷太の部屋で二人は組織作りについて話し合っていた。部屋の中にはパソコンやコンポなどのオーディオ類がひしめいている。
「それには私に考えがあります。ちょっと待っててください……今考えている計画を実行にうつしますから」
「僕には言えない?」
そう訪ねる雷太にカーくんは微笑んで
「失敗したら、格好悪いですから」
と答え、本部の設置場所や具体的な悪事についての検討を進めるのだった。全日本悪役協会には雷太の写真付きで登録届けを出し、参考資料を基に規則を決めていった。例の計画をおくびにも出さずに着々とカーくんは例の計画を進める。
そして数日後、カーくんは駅にいた。雷太の家からは少し離れたその駅は会社帰りと思しきサラリーマンが次々足早に通り過ぎていく。
「まだですかね」
カーくんは一人呟いていると、目的の人物が現れた。
「すいません、ちょっといいですか」
「はあ」
声をかけられたのは、三十代半ばといったところの平凡なサラリーマン。どこにでもいそうで、これといった特徴は見当たらない。ただ、仕事には疲れているらしく、背中が丸まっているのが哀愁を誘う。
「お話したいことがあるんですよ、ロブスター星人のシュリンパーさん」
「!」
サラリーマンはしまったという表情を覗かせたが、すぐに取り繕って切り返した。
「あの、宗教の勧誘はちょっと……」
「宗教ではないのは貴方もよくご存知のはずです。ごまかしても無駄です。私は、宇宙調査員なんですから」
宇宙調査員とは惑星についてのデータを集めて宇宙百科を作るための調査員である。その星の大きさから資源、もちろんその星に住む宇宙人の割合も把握している。
「新しいお仕事を紹介しようと思いましてね。今の仕事、思うように行かないことが多いでしょう?」
サラリーマン、いやシュリンパーは黙り込んだ。宇宙人だと知られないように一瞬たりとも気を抜けないのは確かだったからだ。
「異人館で逢いましょう」
カーくんは合言葉のようにそう告げると、自分の名刺と異人館への地図をシュリンパーに手渡した。異人館とは、地球に住む宇宙人の交流の場としてもうけられている。見かけは普通のバーだが、シールドを張った中にはいろんな宇宙人が星に帰れないぐちをこぼしていたりする。
「何なんだ……?」
シュリンパーは呆然とそこで立ちすくみ、カーくんを見送った後に帰路につくのだった。
次回『ろ ろくな男じゃありません』
「カーくん!」
そう叫んで走りこんできたのは、可愛らしいという形容がぴったりの男の子。茶色のふわふわとした髪と大きな目、長い睫に白い肌が夏の日差しに眩しい。細い手足がTシャツと短パンからのぞく。年頃は十二、三といったところか。
「なんです、雷太さ……うわっ」
『カーくん』と呼ばれて振り返った青年は、走りこんできた少年を抱きとめた。青年は二十代半ばといったところで、少年よりも二十センチほど背が高く、やや痩せ型。涼しげげな目元にシャープな顔のラインが知的に見える。
「例の計画、進んでる?」
カーくんを見上げて少年は笑いかける。
「ええ……でも、私を見かけたからっていきなり抱きつくのはよしてくださいね、雷太さん」
雷太はカーくんの言葉を無視して、さらにぎゅうっと抱きつく。
「だって嬉しいんだもーん」
家の中ではまだしも、外でやられたら周りの目が痛いな、とカーくんは思いつつも好意をまっすぐに伝えてくれる雷太には敵わないのであった。
日本のどこかで、新たな悪の組織が誕生しようとしていた……その名も『ブラック・サンダー』ちょっとずれた感じのネーミングがマニア心をくすぐる。
総帥は黒田雷太、十五歳。この春から高校一年生になるロリータ系美少年だ。背は十五歳男子平均よりかなりひくく、筋肉の付きにくい体とぱっちりした大きな目、ちょっと天然パーマとふわふわとした髪の毛が女の子に見えなくもない。そして、参謀にはカーくん。雷太の家の居候で実は宇宙人だ。宇宙船で不時着したときに雷太に拾われ、今に至る。
「二人って訳には行かないよね? どうやって人を集めるの?」
ブラック・サンダー仮本部こと雷太の部屋で二人は組織作りについて話し合っていた。部屋の中にはパソコンやコンポなどのオーディオ類がひしめいている。
「それには私に考えがあります。ちょっと待っててください……今考えている計画を実行にうつしますから」
「僕には言えない?」
そう訪ねる雷太にカーくんは微笑んで
「失敗したら、格好悪いですから」
と答え、本部の設置場所や具体的な悪事についての検討を進めるのだった。全日本悪役協会には雷太の写真付きで登録届けを出し、参考資料を基に規則を決めていった。例の計画をおくびにも出さずに着々とカーくんは例の計画を進める。
そして数日後、カーくんは駅にいた。雷太の家からは少し離れたその駅は会社帰りと思しきサラリーマンが次々足早に通り過ぎていく。
「まだですかね」
カーくんは一人呟いていると、目的の人物が現れた。
「すいません、ちょっといいですか」
「はあ」
声をかけられたのは、三十代半ばといったところの平凡なサラリーマン。どこにでもいそうで、これといった特徴は見当たらない。ただ、仕事には疲れているらしく、背中が丸まっているのが哀愁を誘う。
「お話したいことがあるんですよ、ロブスター星人のシュリンパーさん」
「!」
サラリーマンはしまったという表情を覗かせたが、すぐに取り繕って切り返した。
「あの、宗教の勧誘はちょっと……」
「宗教ではないのは貴方もよくご存知のはずです。ごまかしても無駄です。私は、宇宙調査員なんですから」
宇宙調査員とは惑星についてのデータを集めて宇宙百科を作るための調査員である。その星の大きさから資源、もちろんその星に住む宇宙人の割合も把握している。
「新しいお仕事を紹介しようと思いましてね。今の仕事、思うように行かないことが多いでしょう?」
サラリーマン、いやシュリンパーは黙り込んだ。宇宙人だと知られないように一瞬たりとも気を抜けないのは確かだったからだ。
「異人館で逢いましょう」
カーくんは合言葉のようにそう告げると、自分の名刺と異人館への地図をシュリンパーに手渡した。異人館とは、地球に住む宇宙人の交流の場としてもうけられている。見かけは普通のバーだが、シールドを張った中にはいろんな宇宙人が星に帰れないぐちをこぼしていたりする。
「何なんだ……?」
シュリンパーは呆然とそこで立ちすくみ、カーくんを見送った後に帰路につくのだった。
次回『ろ ろくな男じゃありません』
<<ろ ろくな男じゃありません | ホーム | ブラック・サンダー物語(11)>>
Comments
Comment Form
Trackback
| HOME |


