ものぐさや
悪役が主役の『戦隊もの』小説
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ブラック・サンダー物語(5)
「第一回はトラレンの各メンバー紹介が主な内容ですが、私たちのことを視聴者の皆さんに覚えていただくことが必要です。そこでまず、初めに出撃し、私たちの第一印象を決定する方を決めたいと思います」
トラフィックレンジャーは『トラレン』と言う略称にされたらしかった。格好のつかない略称だが、言いやすい。
「どなたか立候補する方はいませんか?」
最初に登場する怪人といえば、組織の中でも一番弱いものと相場が決まっている。最初から幹部クラスを五人ほど送り込めば、ブラック・サンダーが勝利できると分かっているのだが、それは「悪役基本法」で禁止されているのだ。RPGにおいて、主人公の住む村の周りには経験値の低いキャラクターしか配属されないのと同じ原理と思ってもらって差し支えない。正義の味方をちょっとずつ育ててやるのも、悪役の大事な役目だ。
「俺、せっかくなら中盤の方がいいな」
「俺だって、トラレンの紹介の為の当て馬は嫌ですよ」
一番手を押し付けあう怪人たちを眺め遣り、総帥はぽつりと、
「じゃ、カーくんに任せようかな」
と呟いた。
「別に構いませんよ」
カーくんも余裕の表情で答える。焦ったのは怪人たちだった。
「ええっ!」
「それは困るっ!」
「参謀が最初に出たら、それより後の怪人なんて……記憶に残るわけないじゃないですかぁ〜」
そう、カーくんは見るからに幹部クラス。甘いルックスと丁寧な言葉遣いで奥様方のハートをわしづかみにするのは目に見えている。正義の味方よりも関連グッズが発売される可能性さえある。
「誰も行かないなら、本当に私が行きますよ?」
そう微笑むカーくんに怪人達は泣き付いた。
「それだけは!」
「それだけはやめてください!」
「それぐらいなら、俺が行きます!」
「いや、私が!」
ちらほらと手が挙がるのが見えた。皆、カーくんの後の雑魚怪人となるより最初の怪人に成る方がましだと思ったらしい。同じ記憶に残らない怪人でも惨めさは後者の方がまだ小さい。
「最初から、そう言って頂ければよかったんですよ」
にっこりと微笑んで、カーくんは教師の用の指差し棒で玉座の後ろのスクリーンを指した。
「ここに、貴方たち全員の名前をいれたスロットを用意しました。総帥に止めていただいて、当たった人に一番手を勤めていただきます」
あらかじめ用意してあったそのスロットに、怪人一同はどっと疲れを感じた。自分たちに、選択の余地など端からなかったのだ。
(6)へ続く
(4)へ戻る
トラフィックレンジャーは『トラレン』と言う略称にされたらしかった。格好のつかない略称だが、言いやすい。
「どなたか立候補する方はいませんか?」
最初に登場する怪人といえば、組織の中でも一番弱いものと相場が決まっている。最初から幹部クラスを五人ほど送り込めば、ブラック・サンダーが勝利できると分かっているのだが、それは「悪役基本法」で禁止されているのだ。RPGにおいて、主人公の住む村の周りには経験値の低いキャラクターしか配属されないのと同じ原理と思ってもらって差し支えない。正義の味方をちょっとずつ育ててやるのも、悪役の大事な役目だ。
「俺、せっかくなら中盤の方がいいな」
「俺だって、トラレンの紹介の為の当て馬は嫌ですよ」
一番手を押し付けあう怪人たちを眺め遣り、総帥はぽつりと、
「じゃ、カーくんに任せようかな」
と呟いた。
「別に構いませんよ」
カーくんも余裕の表情で答える。焦ったのは怪人たちだった。
「ええっ!」
「それは困るっ!」
「参謀が最初に出たら、それより後の怪人なんて……記憶に残るわけないじゃないですかぁ〜」
そう、カーくんは見るからに幹部クラス。甘いルックスと丁寧な言葉遣いで奥様方のハートをわしづかみにするのは目に見えている。正義の味方よりも関連グッズが発売される可能性さえある。
「誰も行かないなら、本当に私が行きますよ?」
そう微笑むカーくんに怪人達は泣き付いた。
「それだけは!」
「それだけはやめてください!」
「それぐらいなら、俺が行きます!」
「いや、私が!」
ちらほらと手が挙がるのが見えた。皆、カーくんの後の雑魚怪人となるより最初の怪人に成る方がましだと思ったらしい。同じ記憶に残らない怪人でも惨めさは後者の方がまだ小さい。
「最初から、そう言って頂ければよかったんですよ」
にっこりと微笑んで、カーくんは教師の用の指差し棒で玉座の後ろのスクリーンを指した。
「ここに、貴方たち全員の名前をいれたスロットを用意しました。総帥に止めていただいて、当たった人に一番手を勤めていただきます」
あらかじめ用意してあったそのスロットに、怪人一同はどっと疲れを感じた。自分たちに、選択の余地など端からなかったのだ。
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