ものぐさや
悪役が主役の『戦隊もの』小説
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ブラック・サンダー物語(3)
「ブラック・サンダーの諸君、大広間に集まってください」
社内放送で流れてくる声は、参謀のカトルフィッシャーこと、愛称カーくんのものである。ブラック・サンダーを実質取り仕切っているのは彼だ。「カトルフィッシャー」を日本語訳すると「イカ」だが、彼はイカの姿ではなく、普通の人間の形をとっている。茶色い長めの髪にダークブラウンの瞳、涼しげな目元に長い睫、透き通るように白い肌に瑞々しく紅の唇……童話の中の王子様のような外見は、ある意味普通の人間ではない。年齢についての情報は一切無く、永遠の二十七歳と専らの評判だ。性格は冷徹の一言に尽きる。ブラック・サンダーの部下たちのボーナスカットを眉一つ動かさずに命じたのは一種の伝説だ。しかし、押さえるべきところは押さえているカーくんは、時折見せる優しさで部下を虜にしている。飴と鞭の使い方が恐ろしく上手い。
「遅れたら、怖いよな」
「そうだな……あの人、昔から容赦ないし」
たっちゃんとくららは急いで下の階にある大広間に向かった。
※ ※ ※
薄暗く、やたらと天井の高い部屋は熱気に包まれていた。広さは、学校の体育館より一回りほど小さいくらいだろうか。大理石のようにも見える床の上を一メートル幅の緋色の絨毯が一筋、その部屋の奥の中心にある玉座までひいてある。誰かが通るのを待っているように。
「あーあー。てすてすっ。ただ今マイクのテスト中〜」
玉座より一段低いところでマイクの調整をする影が見えた。シルエットから判断するに、それは蟹だった。
「早くしてください。開始予定より遅れたら困ります」
笑顔が怖いと評判の参謀、カーくんは準備を急ぐ怪人に声をかけた。
「だ、大丈夫ですよ……」
冷や汗をかきつつ答えたのは、蟹に似た何か他の生物だった。二メートル以上あるハイビスカス柄の蟹は、例えシルエットは蟹でも一般的に蟹とは認められないだろう。
「そうですね、間に合うといいですね」
給料の査定に関わるとうわさの閻魔帳をちらつかせて、カーくんは微笑んだ。
「今日は、大切な集会ですから」
怪人たちは当社比一.五倍ほどの速さで準備を終えた。心なしか心理的な疲れが見える。
カツカツカツカツカツ……
靴の音が響く。タップダンス用の靴かと思うほどに足音は大広間に響き、怪人たちは雑談を止めた。
(4)につづく
(2)にもどる
社内放送で流れてくる声は、参謀のカトルフィッシャーこと、愛称カーくんのものである。ブラック・サンダーを実質取り仕切っているのは彼だ。「カトルフィッシャー」を日本語訳すると「イカ」だが、彼はイカの姿ではなく、普通の人間の形をとっている。茶色い長めの髪にダークブラウンの瞳、涼しげな目元に長い睫、透き通るように白い肌に瑞々しく紅の唇……童話の中の王子様のような外見は、ある意味普通の人間ではない。年齢についての情報は一切無く、永遠の二十七歳と専らの評判だ。性格は冷徹の一言に尽きる。ブラック・サンダーの部下たちのボーナスカットを眉一つ動かさずに命じたのは一種の伝説だ。しかし、押さえるべきところは押さえているカーくんは、時折見せる優しさで部下を虜にしている。飴と鞭の使い方が恐ろしく上手い。
「遅れたら、怖いよな」
「そうだな……あの人、昔から容赦ないし」
たっちゃんとくららは急いで下の階にある大広間に向かった。
※ ※ ※
薄暗く、やたらと天井の高い部屋は熱気に包まれていた。広さは、学校の体育館より一回りほど小さいくらいだろうか。大理石のようにも見える床の上を一メートル幅の緋色の絨毯が一筋、その部屋の奥の中心にある玉座までひいてある。誰かが通るのを待っているように。
「あーあー。てすてすっ。ただ今マイクのテスト中〜」
玉座より一段低いところでマイクの調整をする影が見えた。シルエットから判断するに、それは蟹だった。
「早くしてください。開始予定より遅れたら困ります」
笑顔が怖いと評判の参謀、カーくんは準備を急ぐ怪人に声をかけた。
「だ、大丈夫ですよ……」
冷や汗をかきつつ答えたのは、蟹に似た何か他の生物だった。二メートル以上あるハイビスカス柄の蟹は、例えシルエットは蟹でも一般的に蟹とは認められないだろう。
「そうですね、間に合うといいですね」
給料の査定に関わるとうわさの閻魔帳をちらつかせて、カーくんは微笑んだ。
「今日は、大切な集会ですから」
怪人たちは当社比一.五倍ほどの速さで準備を終えた。心なしか心理的な疲れが見える。
カツカツカツカツカツ……
靴の音が響く。タップダンス用の靴かと思うほどに足音は大広間に響き、怪人たちは雑談を止めた。
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